RWC2019

[ラグビー講座] アイランダーたちの戦いの序章 - 先住民族の想いを受け継ぐ「ウォー・クライ」について

Lecture on Rugby - ラグビー講座 第2回
2019.9.12 21:18
[写真]試合後には美しい歌声を披露するフィジー代表。素晴らしいパフォーマンスは必見だ

アイランダーたちが試合前に見せる「ウォー・クライ」。そこにはどのような想いや
意味が込められているのだろうか。フィジー、トンガ、サモア出身のラガーマンたちが、
自分たちの幼少期の経験をもとに解説してくれた。

 太平洋の島々に住む先住民族が、戦いの前に行っていた舞踊に由来する「ウォー・クライ」。ニュージーランド代表が試合前に見せる「ハカ」が有名だが、フィジー、トンガ、サモアの代表チームも、それぞれ「ジンビ」、「シピ・タウ」、「シヴァ・タウ」と呼ばれるウォー・クライを披露する。

 フィジーのモセセ・ナセゲセゲ、トンガのオペティ・ファエアマニ、サモアのアウクソ・タウマファイとも、ウォー・クライは子供の頃、先輩がやっているのを見たり、コーチから教わったりして覚えたという。

フィジー代表 「斧」を想起させる戦いの準備 

 フィジーの「ジンビ」は、3つの中では最も時間が短く、身体を低くして肩のあたりで何かを構えているようなしぐさが印象的だ。ナセゲセゲによると、これは先住民の伝統的な武器である「斧」をイメージしているという。

 試合前のジンビは「気持ちを高ぶらせ、心身ともに戦う準備をするためのもの」とナセゲセゲは説明してくれたが、フィジーには来客時などにパフォーマンスとして行う「クリスティアン・ジンビ」というものもあるという。また、フィジー代表は試合前にジンビを披露し、試合後には全員が円陣を組んで歌うことでも知られる。ラグビーのスタイルは「世界一美しい」と言われるが、その美声もなかなかのもので、屈強な男たちが意外な一面を見せてくれる。フィジーの試合ではぜひ注目してほしいポイントの一つだ。

トンガ代表 感情が高ぶる特徴的な力強い動き

トンガの「シピ・タウ」は、プレースタイル同様、力強い動きが特徴的。フィールドにこぶしをたたきつける動きが入るが、ファエアマニによると「大地そのものがトンガを表す」ことを表現しているという。また、トンガの人々は、日常生活の中で「シピ・タウ」を披露することもあるそうで、ファエアマニは「誰かの誕生日など、お祝いの場面ではテンションが上がってやることもあります」と事例を紹介してくれた。
 
 それでも「本来は試合前に気持ちを高ぶらせるためにやるもの」。ファエアマニ自身、トンガにいた頃は毎週金曜日に学校内での真剣勝負の試合があり、その時には対戦する両チームの選手が「シピ・タウ」をやって気持ちを高めていたという。「やるとやらないとでは全く違いますし、感情が高ぶりすぎて涙を流す人もいるほどです」

サモア代表 調和を重視したリズミカルな舞い

 サモア諸島は現在、サモア独立国とアメリカ領サモアに分かれている。かつてドイツが西側を、アメリカが東側を領有し、それぞれ西サモア、東サモアと呼ばれるようになる。西サモアは1962年に独立し、1997年に現在の「サモア独立国」に名称を変更した。タウマファイによると、サモアのウォー・クライ「シヴァ・タウ」は国のそのような歴史を踏まえつつ、「自分の国を忘れないように、という意識でやります」。「シヴァ・タウ」をやることによって、サモア代表の選手たちは「高いプライドを保つことができるよう」という。
 
 他国のウォー・クライが力強さを見せる要素が強いのに対し、「シヴァ・タウ」は選手たちが背筋をピンと伸ばしてやや腰高に構え、調和の取れた動きをする。リズムが速く、ダンス的な要素が強い。

 自分たちのルーツや歴史に誇りを持ちつつ対戦相手を敬い、全力で立ち向かう準備をする「ジンビ」、「シピ・タウ」、そして「シヴァ・タウ」。アイランダーたちにとっては、心のスポーツであるラグビーと同様、不可欠なものなのだ。(文中敬称略)

構成=池田敏明 Organization by Toshiaki IKEDA 
写真=ゲッティ イメージズ Photo by Getty Images

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