RWC2019

[ラグビー講座] 語り継がれる伝説のトライ - ラグビーの華と言われる「トライ」について

Lecture on Rugby - ラグビー講座 第1回
2019.9.11 21:44
[写真]対抗戦の早明戦では勝てる試合を引き分けた明大。それだけに吉田義人の勝利に懸ける想いは凄まじいものがあった

圧倒的なパワーを武器にフォワードで一気に押し込むトライがあれば、ウイングが絶対的なスピードを生かしてインゴールに飛び込む華麗なトライもある。今でも語り継がれる伝説のトライをご紹介しよう。

 ラグビーの華といえばトライ。異論もあるだろうが、最もスタジアムが沸くシーンの一つであることに間違いはないだろう。ところがこのトライ、1800年代後半のラグビー草創期にはルール上0点だったと言うではないか。トライ自体には得点はなく、あくまでも「ゴールキックを蹴る権利」を得るための手段だったというのだ。

 その後、トライに対する認識は改まり、1890年に1点、翌1891年には2点、1893年からは長い間、「トライ=3点」時代が続いた。そして1971年に4点となり、さらに1993年から現行の5点へと変更になった。トライを取り合うことでより試合内容が活性化し、ゲーム性
の高い、面白くてダイナミックな展開を求め、トライの得点数も変わっていった。

 過去さまざまなトライが生まれてきたが、日本ラグビー史上、忘れてならないのが坂田好弘のトライだろう。1968年6月、大西鐵之祐監督率いる日本代表はニュージーランド遠征を敢行。第8戦のオールブラックス・ジュニア(23歳以下)戦で23−19と歴史的な勝
利を挙げたが、その原動力となったのが坂田の4トライだった。空中を飛んでインゴールにグランディングする坂田を見て、現地メディアは「Flying Wing(空飛ぶウイング)」と報道し、坂田は一躍脚光を浴びるようになる。翌1969年、ニュージーランドに留学するとカンタベリー州代表入りを果たし、年間最優秀選手(5名)に選出されるなど、日本のトライゲッターは本場でも認められた。それらかつての目覚ましい活躍が評価され、2012年、国際ラグビーボードの殿堂入りを果たす。アジア初の快挙であり、世界でも51番目という名誉であった。

 1970年代後半から80年代にかけて国内では空前のラグビーブームが沸き起こった。「北の鉄人」と呼ばれた新日鉄釜石が松尾雄治、森重隆(現日本ラグビーフットボール協会会長)らを擁し、前人未到の日本選手権7連覇を達成。さらにその後、神戸製鋼もまた平尾誠二という不世出のスター選手を軸に7連覇を達成し、冬のスポーツニュースの主役は常にラグビーだった。大学ラグビーも隆盛を極め、早明戦ともなれば、国立競技場は満員の観客がふくれあがった。その人気絶頂期にあたる1991年に2つの伝説的なトライが生まれている。

 一つは第27回全国大学選手権決勝。早明両雄の対決である。早大リードで迎えた後半26分、明大伝統の重戦車フォワードがじりじりと威力を発揮。何度も縦への突破を試みて敵陣に入ると、スクハムハーフ永友洋司が左に展開。最後にパスを受けた吉田義人
が追いすがる早大のフルバック今泉清を左タッチライン際で振り切り、襲い掛かる何人ものタックルを振り払って左隅に飛び込んだ。16−13。執念の逆転トライだった。

 その2日後、今度は秩父宮ラグビー場で奇跡が起こる。三洋電機対神戸製鋼による第43回全国社会人大会決勝戦。後半ロスタイムを過ぎ16−12と三洋電機がリード。勝利を確信した三洋の宮地克実監督がスタンドで立ち上がり、笑顔を見せる。ところが最後のワンプレー。ワンバウンドになった薮木宏之のパスを拾った平尾誠二がタイミングをずらして絶妙のパスを送ると受けたイアン・ウィリアムスが追いすがる相手を振り切り、約50メートル独走し中央に同点トライ。細川隆弘が冷静にゴールを決め、18−16と逆転し、3年連続優勝を遂げた。

 坂田好弘以来、ラグビー殿堂入りを果たしたトライゲッターがいる。大畑大介だ。彼のトライシーンもまた語り草だ。特に1999年の香港セブンズのスコットランド戦。試合終了間際、自陣から100メートルあまりを独走して逆転トライを決め、その鮮烈なインパクトから大会MVPにも輝いた。2006年には日本代表として通算65トライを挙げ、世界最多記録(当時)をマークした。

[写真]抜群のスピードを身体能力を誇った大畑大介

 ワールドカップでもさまざまなトライシーンが生まれているが、最も強烈なインパクトを残したのはジョナ・ロムーだろう。史上最年少(当時)の19歳でオールブラックスに選出されると1995年、1999年と2度W杯に出場。196センチ119キロながら100メートルを10秒台で走り抜けるスピードを武器に障害物をなぎ倒すような一直線の走りは「暴走機関車」と呼ばれるほどの破壊力だった。2度の大舞台で計15トライを決めたスーパースターは後年、腎臓を患い、2015年に帰らぬ人となる。40歳の若さだった。

[写真]ジョナ・ロムーがイングランド戦で見せた伝説のトライ

 

構成=編集部 Organization by Editorial Staff 
写真=ゲッティ イメージズ、アフロ Photo by Getty Images, AFLO

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