RWC2019

ラグビー日本代表、W杯登録メンバー31名発表!ジョセフHCが選考理由を語る

2019.8.29 20:00

8月29日(木)、日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が記者会見に臨み、ラグビーワールドカップ登録メンバー31名を発表した。

チーム内でのメンバー発表は8月18日から28日まで行われた網走合宿の解散前に行われたそうで、外れたメンバーに対してはジョセフHCが個別に1対1で話をしたそうで、「非常につらい作業だった」(ジョセフHC)という。

代表の記者会見が行われたホテルは約3年前、自身の就任会見が行われた場所でもあり、その第一声は就任当時より今年に至るまでの過程から始まった。

「ちょうど3年前、来日した時にこの会場で記者会見しました。こうしてメンバーを発表できる機会をいただき、名誉に思っています。2019年に向けてHCとしてしなければならなかったのは、まず選手層を厚くすること、育成を進めることでした。(そこで行ったのが)スーパーラグビーというタフな環境でサンウルブズを通じた育成、そしてもうひとつは日本代表がすべてのティア1のチームと対戦することでした。4年の時を経て、すべてのティア1の国と戦うことができ(9月6日の南アフリカ戦を含む)、スーパーラグビーは4シーズン戦うことができました。その甲斐もあり選手たちは心身ともにワールドカップで戦うための力がついたと思っています」

心身の力。その言葉が出た後、ジョセフHCはメンタル面の成果を語った。

「さらに取り組んだのはメンタリティーの強化でした。強豪に勝てるという確信を持つ必要がありました。そのためにコーチ陣としっかり意思統一を図り連携することで、チームカルチャーを作ってきました。その結果、選手たちは積極性を持ち、ラグビーをエンジョイすることで立ちはだかるチャレンジまでをも楽しむということをさせてきました。今では選手たちが『ONE TEAM』になったと確信しています」

ジョセフHCにとって、今年は2018年以前とは違う1年となったという。それまでコントロールしきれなかった部分までジョセフHCらコーチ陣の管理が行き届くようになったためだ。

「今年初めて、全選手をコントロールすることができました。まずは選手たちに休暇を与えること。この先、立ちはだかる挑戦に対して心身ともに準備させる期間を作ることができました。その後はほどほどの強度で鍛えた後『ウルフパック』(日本代表候補による特別チーム)で試合を重ねました。その後、身体的に堪える合宿を宮崎で行いました。合宿中の測定では全選手が自己ベストを更新し、選手たちが自信をつけました。そして蓄積したすべてのことをPNC(パシフィック・ネーションズカップ)につなげ、(8月28日までの)網走合宿、そして南アフリカ戦(9月6日)に臨むことになります」

PNCで全勝優勝した一方で、ジョセフHCが抱く危機感は変わっていない。そして外れたメンバーに対するリスペクトも忘れてはいなかった。

「南アフリカ戦やワールドカップはそれとは全く違うレベルになるでしょう。(そのレベルで戦うために)今回31名のメンバーが選出されましたが、これまで41~42名全員がチームのためにベストを尽くしてきました。そのような選手を外すのは非常に苦しい決断でもありました。我々はトップ8というこれまで掲げたことのない目標を掲げて、難しいチャレンジにはなるが100%の力を注いでそこに邁進したい」

その後、ジョセフHCがFW18名、BK13名を発表し(リストは文末参照)、記者からの質問に応じた。まずは激しい競争が行われたSH、フロントローについて問われると、ジョセフHCはこのように答えた。

「ワールドカップのルールでは(バックアップメンバーと)交替できることにはなっているが、フロントローにも言えるように、各ポジションのスペシャリストについては自分たちの戦い方やチームのやろうとしていることを熟知している選手を入れたいという意図があり、またSHにけが人が出て入れ替えた場合チームにとっても打撃になるので3人選ぶという決断に至りました。

FW第1列はセットプレーで各自が与えられた役割を遂行できるかどうか、そしてセットプレーのプレッシャーにしっかり耐えられるかどうか。ロシア、アイルランド、サモア、スコットランドに対して互角に戦えるかどうかが一つの基準となりました。後は自分たちのゲームの運び方、プレーの仕方をしっかりと理解できているかどうか、それが遂行できるかどうかという点で最適な選手を選びました」

これまでほぼ出番のなかったHO北出卓也、WTBアタアタ・モエアキオラについては選考理由をこのように説明した。

「まずアタアタについてですが、現在、アウトサイドBKは松島、福岡、レメキ、トゥポウと非常に優秀な選手が揃っています。しかしアタアタは非常に大きくてパワフルな選手です。PNCでそこまでゲームタイムを与えなかったのはチーム力を上げたい、チームを育成したいという考えがあったので、フロントランナー(1本目)の選手を使うことが先決でした。アタアタはスーパーラグビーでも活躍していましたが、まだまだ若いですしまだ成長しないといけない部分があります。

北出に関しては、その前に(外れた)HO堀越康介について説明します。彼のことはコーチ陣も非常に気に入っていましたし、非常にリスペクトに値する選手です。サントリーではPRでプレーしていましたが、我々はHOとして見ていました。しかしHOのスキル、ラインアウトでのスキルが他の選手より劣ってしまっていました。1年間で育成、指導していこうと(昨秋の)イングランド遠征にも連れていき、今年のPNCでもコーチングしました。評価に値する選手なのは間違いないですが、スローイングはスペシャリストである北出の方が彼より上だと判断しました」

続けて、比較的層の薄いSOについてはこのように説明した。

「もしSOがケガしたらどうするのかについてですが、もし次の南アフリカ戦で、田村がねんざしたら入れ替えるのかといえば自分の答えとしてはノーです。チーム内の31名でカバーできるように試行錯誤して、今回のメンバーになっています。PNCでも優勝を目指して戦ってきましたが、PNCでは試合後に毎回5~6名替えて試合に臨むことができて、ワールドカップに向けてもいい準備ができました。ただワールドカップはスコッドのルールが違うので、そのときそのときで考えていきたいです」

また、31名から漏れた選手によって構成される負傷者が出た際などに充当される交替要員、すなわちバックアップメンバーに関する質問も飛んだが、そのメンバーは発表しなかった。

「(けが人が出たら)バックアップメンバーから入れ替えるという構想にあります。網走合宿まで41名の選手を準備させてきました。漏れた10名以外にもウルフパックにいたCTB立川理道、WTB山田章仁、WTB尾崎晟也、SH内田啓介も控えているので、バックアップメンバーとしては豊富にいます。軽度のケガなら、カバーできるポジションであれば(正メンバーで)カバーしてしのごうと考えていますが、もし深刻なケガがあった場合は(バックアップメンバーと)入れ替えることを考えます」

また、31名のスコッド中、外国出身者が過去最多の15名となったことについて、チームのダイバーシティーについても問われた。

「まず、どこまで外国人選手というのがあると思います。リーチは外国出身ですが、人生の半分を日本で過ごしています。完全に日本人なところもあります。イシレリも中島という日本の名字を持っていて、日本に馴染みのある選手です。けれども外国出身選手というところだけみると、体格的が大きいので、フィジカル的な存在感をもたらせてくれます。

外国出身選手は存在感、フィジカルの強さがあると思います。あとはテストマッチなどで経験値も高いということであるので、我々はワールドカップではティア1のチームに快勝できるとは思っていません。本当に勝機は1回、または2回しかないと思います。プレッシャーがかかる中で、チームとしてプレーを遂行できるかどうかということが関わっていますが、その中で外国人もっている経験値によりチームが自信を持って、思い切ってプレーできると思います」

最後に、日本ラグビーの武器、強みについて問われたジョセフHCはこのように答えた。

「これ一つといった武器はありません。この3年間、自分たちのゲームをしっかり組み立ててきました。スピードのはやい展開、スキルを活かして、アンストラクチャー(崩れた状態)で自分たちの強み発揮することです。今年は、それを実行するだけのフィットネスも鍛え上げられることができました。ワールドカップに向けて、フィットネス、強さを強化するには時間がかかりましたが、今、現在、トレーニングではテストマッチのもたらす強度よりも25%高い強度の中で練習ができるようになりました。それが実証できたのがフィジー戦。2ヶ月、まったく試合してなかったのに、熱い中、相手より長い時間、強度の高い試合をして快勝することができました。 もう一つの強みは形がないものです。非常に日本代表は結束力の高いチーム、『ONE TEAM』になったと言えると思います。私はHCとして、そこを一番に重んじてコーチし、チームを指導してきています。チームのためなら何でもできる。身体も張れる、死ぬ覚悟でいけるという気持ちを持った選手たちを鍛えるのが私のひとつの目標です。今、選手たちは意志統一されて、同じ絵を見て励んでおります。だから、この2つが強みになると思います」

チームとして確かな強化と一体化が進んだ実感を言葉に込めながら、1時間近くに及んだ記者会見を締めくくったジョセフHC。ワールドカップの前に、その成果を9月6日(金)の南アフリカ戦(熊谷)で発揮する。

 

<ラグビー日本代表 最終登録メンバー31名>

◎:キャプテン ☆:ワールドカップ出場回数 ( )内は所属チーム、キャップ数

 

FW:18名

PR稲垣啓太(パナソニック、28)☆

PR中島イシレリ(神戸製鋼、2)

PR具智元 (Honda、7)

PRヴァル アサエリ愛(パナソニック、8)

PR木津悠輔(トヨタ自動車、3)

HO堀江翔太(パナソニック、61)☆☆

HO坂手淳史(パナソニック、16)

HO北出卓也(サントリー、0)

LOトンプソン ルーク(近鉄、66)☆☆☆

LOヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ、12)

LOヘル ウヴェ(ヤマハ発動機、13)

LOジェームス・ムーア(宗像サニックス、2)

FLツイ ヘンドリック(サントリー、44)☆

FL徳永祥尭(東芝ブレイブルーパス、11)

FLリーチ マイケル(東芝、62)◎/☆☆

FLピーター・ラブスカフニ(クボタ、2)

FL/NO8姫野和樹(トヨタ自動車、12)

NO8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ、24)☆

 

BK:13名

SH田中史朗(キヤノン、70)☆☆

SH流大(サントリー、18)

SH茂野海人(トヨタ自動車、9)

SO田村優(キヤノン、57)☆

SO/CTB松田力也(パナソニック、19)

CTB中村亮土(サントリー、18)

CTBラファエレ ティモシー(神戸製鋼、17)

CTBウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ、9)

WTB福岡堅樹(パナソニック、33)☆

WTBアタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼、3)

WTBレメキ ロマノ ラヴァ(Honda、11)

FB/WTB 松島幸太朗(サントリー、33)☆

FB山中亮平(神戸製鋼、13)

 

<ラグビー日本代表 今後の日程>

9月6日(金) VS南アフリカ(19時15分KO・熊谷ラグビー場)

 

・ラグビーワールドカップ

9月20日(金) VSロシア(19時45分KO・東京スタジアム)

9月28日(土) VSアイルランド(16時15分・エコパスタジアム)

10月5日(土) VSサモア(19時30分・豊田スタジアム)

10月13日(日) VSスコットランド(19時45分・横浜国際総合競技場)

この記事を書いたひと

齋藤 龍太郎RYUTARO SAITO

編集プロダクション(株)楕円銀河代表。日本と世界のラグビーの“今”を自らの足で取材し日々情報発信しているWeb媒体・紙媒体、「ラグビー∞アンリミテッド」を運営。編集者兼ライター、時々フォトグラファーとしてラグビーのみならず幅広いジャンル、また様々なメディアで活動中。