RWC2019

W杯への腕試し!PNCは「ジャパンがどれだけ成長できたか」の確認の場

斉藤健仁の「ジャパンの現在地」第10回
2019.7.25 12:00

 ワールドカップ(W杯)まで残り2ヶ月を切った。宮崎で約30日間にわたる〝地獄の合宿〟を経て、ラグビー日本代表は、その前哨戦とも言える大会である「パシフィックネーションズカップ(PNC)」を迎える。

 この大会はワールドラグビー主催の環太平洋のチームが参加して行われている国際大会で、2006年から始まった。ただ2017年からの3年間はワールドカップ予選を兼ねていたこともありフィジー代表、サモア代表、トンガ代表のアイランダーの国を中心に行われていた。そして2019年の大会には9月のW杯を控えてアイランダーの3国に、日本代表、アメリカ代表、カナダ代表とW杯に出場する6カ国が参加する。

 リーダー陣のひとりPR稲垣啓太が「(PNCの)どのチームもFWが大きい。W杯で日本代表と対戦するチームもFWはどこも日本よりも大きい。大きいFWに対してどういったスクラムを組むのか、どういったラインアウトをするのか、どういったモールを組むのか、どういった戦術を組んでいくのか。そういった意味では仮想W杯という意味合いはあるのでは」と言うとおり、通常のテストマッチより大きな意味を持つ大会となる。

 日本代表(世界ランキング11位※7月23日現在)の対戦予定は下記の通りである。日本でフィジー代表(同9位)、トンガ代表(同13位)と2試合戦った後、フィジーでアメリカ代表(15位)と対戦し、カナダ代表、そしてW杯で対戦するサモア代表とは相まみえないが、総勝ち点で総合順位を決める。

 

◇日本代表の予定

7月27日(土) 日本代表 対 フィジー代表@釜石鵜住居復興スタジアム

8月03日(土) 日本代表 対 トンガ代表@東大阪市花園ラグビー場

8月10日(土) 日本代表 対 アメリカ代表@フィジー・スヴァ

 

 すでにPNCに向けた日本代表31名は発表された(下記参照)。ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は「若手とベテランが混ざった非常にバランスのとれたスコッドになった。今は非常にいいブレンドができていると思います。非常にバランスの取れたチームで、現状ベストのメンバーを選べた」と胸を張った。

 オールブラックス、そして日本代表でもW杯出場経験のある指揮官はが「一貫性を持ったいいパフォーマンスをしてくれたら、そこからあえて変えるのは難しい」と言うとおり、PNCでコーチ陣のパフォーマンスをしっかり見せた選手たちは、当然、8月末に発表される31名のワールドカップスコッドに近づく。

 今回のスコッドで注目されているのは、左PR中島イシレリ(神戸製鋼)、右PR具智元(Honda)の2人がケガしたこともあり、左PR三浦昌悟、右PR木津悠輔(ともにトヨタ自動車)という社会人2年目の若きPRがメンバー入りを果たしたことだ。

 ジョセフHCは「フロントローはケガ人が出たので新しい選手を試してみたい。不確定な2人を試してみて、W杯でもやれるのか見てみたい」と2人の活躍に期待を寄せた。LOジェームス・ムーア(宗像サニックス)、FLピーター・ラブスカフニ(クボタ)という6月に日本代表資格を得た2人をテストマッチで起用したいという思いもあるだろう。

 キャプテンのFLリーチ マイケルは「いい土台が作れた感じがします。第1、第2クールで、かなりフィジカル面でも向上できました。走る量も上がってきて、疲れてきたときに集中できる(宮崎合宿を経て)ジャパンがどれだけ成長できたか。4年間、(ジェイミージャパンで)やってきたことを出す」と意気込んでいる。

 またPNCを戦ってからW杯へ――という流れは、W杯の過去の3大会と同じだ。

 2007年のPNCはオールブラックスジュニアやオーストラリアA代表など6チームが参加し、日本代表はトンガ代表に20-17で勝利したものの、最下位だった。そしてW杯ではカナダ代表に12-12と引き分けるのがやっとだった。

 2011年のPNCはアイランダーの3カ国と日本代表の4チームが対戦し、日本代表はサモア代表には敗れたもののトンガ代表、フィジー代表に勝利し、初優勝を果たした。大きな自信を持ってニュージーランドで行われたW杯に臨んだが、トンガ代表には苦杯をなめて、再びカナダ代表と引き分けて1勝3敗だった。

 そして2015年のPNCは、2つのプールに分かれて行われた。カナダ代表に勝利したものの、アメリカ代表、フィジー代表に敗れて、さらに順位決定戦でトンガ代表にも20-31で敗れて大会を4位で終えた。ただ、課題が多く出た試合となったが、W杯では3勝1敗と結果を残した。

 W杯まであと数ヶ月あるPNCではまだポジション争いの途中であり、当然、ケガでメンバーが変わることもあるため、PNCの結果がW杯にそのまま反映されていないことがわかる。自信をつけるのはいいが過信になってしまうと本番で痛い目にあってしまう。もし結果が出なくても、ゲーム内容と向き合い、次につなげていくことが大事となってくる。

 過去2大会のPNCとW杯を経験しているHO堀江翔太は「(PNCでは)勝敗よりも自分たちがどれだけしたいことができたか、できなかったか(が大事)。僕らのラグビーで、相手がやってくることを消せるかといった部分にフォーカスして、勝ったらそれはそれでいいですし、負けたら何が足りなかったと考えたことが、2015年のW杯につながった」と言うとおり、PNCはもちろん勝つことも大事だが、その一方で、今までの合宿でやって来たことを試合で出せるか、まだ課題を洗い出すことに焦点が置かれる試合となろう。

 ただ稲垣が「先を見すぎても目の前のことがおろそかになると思います。まず目の前の試合を勝つ、そのために必要な準備をやっていく。準備して勝って、準備して勝っていく先にW杯がある」と言うように、日本代表は目の前の試合にしっかり準備して集中していくことが、何よりW杯での勝利、そして悲願のベスト8進出につながっていく。

 

◇PNCに向けた日本代表メンバー 31名

※数字はキャップ数(7月20日現在)

 

<FW18名>

PR稲垣啓太(パナソニック、25)

PR三浦昌悟(トヨタ自動車、5)

PRヴァル アサエリ愛(パナソニック、5)

PR木津悠輔(トヨタ自動車、0)

HO堀江翔太(パナソニック、58)

HO坂手淳史(パナソニック、13)

HO堀越 康介(サントリー、2)

LOトンプソン ルーク(近鉄、64)

LOヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ、9)

LOヘル ウヴェ(ヤマハ発動機、11)

LOジェームス・ムーア(宗像サニックス、0)

FLツイ ヘンドリック(サントリー、43)

FL徳永祥尭(東芝、10)

FL布巻峻介(パナソニック、7)

FLリーチ マイケル(東芝、59)※キャプテン

FLピーター・ラブスカフニ(クボタ、0)

FL/No.8姫野和樹(トヨタ自動車、9)

No.8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ、22)

 

<BK13名>

SH田中史朗(キヤノン、69)

SH流大(サントリー、15)

SH茂野海人(トヨタ自動車、7)

SO田村優(キヤノン、54)

SO/CTB松田力也(パナソニック、16)

CTBウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ、6)

CTB中村亮土(サントリー、16)

CTBラファエレ ティモシー(神戸製鋼、14)

WTB福岡堅樹(パナソニック、30)

WTBアタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼、3 )

WTBレメキ ロマノ ラヴァ(Honda、8)

FB/WTB松島幸太朗(サントリー、30)

FB山中亮平(神戸製鋼、12)

この記事を書いたひと

斉藤 健仁KENJI SAITO

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。