RWC2019

つぼみから開花に至る鍵は「グリット」!桜の戦士たちのラグビー歴をたどる

斉藤健仁の「ジャパンの現在地」第8回
2019.6.28 11:30

 現在、ラグビー日本代表は7月末からのPNC(パシフィックネーションズ・カップ)のテストマッチ3連戦、そして9月20日に開幕するラグビーワールドカップに向けて、宮崎の地で1日3部練習にも及ぶ合宿を行っており、ケガ人などを除いて40名ほどが参加している。

 2016年秋、ジェイミー・ジャパンになってからコンテストキックが多くなり、FWとBKもショートパスの回数が増えるなどポジションに関係なくスキルを求められている。そこでまず43名のラグビーを始めた年齢を調べてみた。FW、BKともに差はなく約10歳となった。

 よりパスやキックの回数が多いBKが若いときにラグビーを始めていると予想していた。確かにSH流大(サントリー、26歳)とSO/CTB松田力也(パナソニック、25歳)が6歳、CTB梶村祐介(サントリー、23歳)が5歳など、17人中10人が10歳以下で始めている。だが、SO田村優(キヤノン、30歳)、CTB中村亮土(サントリー、28歳)の2人は中学までサッカー部という共通点がありながらも、高校からラグビーを初めて日本代表に上り詰めたことを考えると、2人は個々のスキルの習得が早く、努力を怠らなかったことがわかる。

 FWは最年少で始めたのはHO北出卓也(サントリー、26歳)の3歳だった。キャプテンのFLリーチ マイケル(東芝、30歳)も5歳から始めているように、特に外国出身選手は小さいときからラグビー始めている選手が多く、10歳以下に楕円球に触れている選手が多いのが特徴だ。

 ただFWの第1列を見ると中学3年、高校1年と14~15歳から始めた選手が7人もいる。やはり、スクラム、ラインアウトではスキルだけでなく、フィジカルも必要で、息の長いポジションだけに、高校から始めても、高校、大学の過ごし方次第では日本代表になれる。大学からラグビーを始めて日本代表になった最多キャップを誇るLO大野均(東芝)、LO大久保直弥(サンウルブズコーチ)がいい例だ。

 次に2020年度の100回大会は、例年より13校増えて64校で行われることが決まった「花園」こと全国高校ラグビー大会で、日本代表選手はどんな成績を残しているのか調べてみた。

 まずはBKで花園に出場できた13 人は、全員花園でプレーしていた。特に桐蔭学園出身のWTB松島幸太朗(サントリー、26歳)、そして東海大仰星(現・東海大大阪仰星)出身のFB山中亮平(神戸製鋼、31歳)とFB野口竜司(パナソニック、23歳)のFB3人は全員花園で優勝経験がある。

 他にも伏見工業(現・京都工学院)出身のSH田中史朗(キヤノン、34歳)は1年生のときはメンバー外だったが優勝を経験し、自身が出場した高校3年時はベスト4に入っている。他にも伏見工業出身の松田、報徳学園出身の梶村などもベスト8に進出している。ただ、他の選手は出場しても1回戦、2回戦負けが多く、高校での悔しさをバネに、それ以降、ラグビーに精を出してきたというわけだ。

 今度はFWを見てみよう。花園に出場可能な選手は16人いるが、花園で優勝を経験しているのは東福岡のFL布巻峻介(パナソニック、26歳)のみだ。しかも布巻は高校時代、主にSO、CTBだったため、FWとして花園で最も好成績を残したのは桐蔭学園出身のHO堀越康介(サントリー、24歳)で準優勝である。

 ただFWはBKと違い、島本高出身のHO堀江翔太(パナソニック、33歳)を筆頭に、都島工出身のPR山下裕史(神戸製鋼、33歳)、青森工業出身のPR三上正貴(東芝、31歳)、由布高出身のPR木津悠輔(トヨタ自動車、23歳)、日本文理付属出身のPR具智元(Honda、24歳)と16人中5人が府県の予選で敗退し、花園の地を踏んでいない。大阪の島本高校出身の堀江は、花園の第2グラウンドの掲示板の中で得点を変える係をしており、木津は1回戦に勝って3年連続2回戦にあたる準々決勝で敗戦している。

 最後に、大学選手権で優勝できたかどうかをみると、一昨年度まで帝京大が9連覇していたことから、HO坂手淳史(パナソニック、26歳)、堀越、FL/No.8姫野和樹(トヨタ自動車、24歳)、SH流、SO松田、CTB中村と帝京大出身の6人、そして早稲田大出身のFB山中の7人となる。一方で埼玉工大出身のPRヴァル アサエリ愛(パナソニック、30歳)、花園大出身のNo.8アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ、29歳)、山梨学院大出身のCTBラファエレ ティモシー(神戸製鋼、27歳)は、大学時代は下部リーグでプレーしていた。

 日本代表にまでなる選手は、花園に出場したかどうか、大学選手権で優勝できたかどうかは関係なく、いずれにせよ、Grit(グリット)」を持った選手であるはずだ。

 Grit(グリット)という言葉は「困難にあってもくじけない闘志、気概」する英語で、ビジネス界でもよく用いられており、物事に対して情熱的に目標を持って粘り強く努力する「やり抜く力」を指す言葉としても有名だ。それは、ジェイミー・ジャパンがスローガンとして掲げ、選手たちに配られていたノートにも大きく書かれた「レジリエンス(不屈の魂)」にも通じている。

 監督やコーチのアドバイスも聞きつつ、信念に基づき、自ら考え、大きな目標を立てつつも、目の前の小さな目標を達成し続けた選手たちだけが、宮崎の地を駆けている。もしかして運も味方につけることも必要かもしれないが、練習でも試合でも常に準備し、ジョセフHCが求める「一貫したプレー」をし続けた選手のみが、桜のジャージーを着てワールドカップの舞台に立つ。

この記事を書いたひと

斉藤 健仁KENJI SAITO

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。