RWC2019

アタアタ&トンプソン招集!42人→31人へ絞り込まれるワールドカップ最終スコッド予想

斉藤健仁の「ジャパンの現在地」第7回
2019.6.7 11:50

ラグビーワールドカップ開幕まで100日あまり。6月3日、東京都内でジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が会見を行い、6月9日から7月中旬まで3回に渡って行われる宮崎合宿に参加するラグビー日本代表42名(FW26名、BK16名)が発表された。

日本代表候補は約60名いたが、サンウルブズと、特別編成チーム「ウルフパック」の実践でふるいにかけられた形だ。このメンバーから31名が7月から8月にかけてフィジー代表、トンガ代表、アメリカ代表と対戦するPNC(パシフィックネーションズ・カップ)を戦い、再び40名ほどで8月下旬に網走合宿を行い、8月末にワールドカップに出場する最終スコッド31名が決まる。

それではワールドカップの最終スコッド31名をFW17or18名、BK13or14名と仮定して、各ポジションの争いを見ていきたい。

まずはワールドカップ本番で、ロシア代表、アイルランド代表、サモア代表、スコットランド代表と対戦することを踏まえるとスクラム、ラインアウトが大事になってくるのは明白であり、特にスクラムではPRの働きが欠かせない。PRは左右3人ずつ、もしくは計5人ずつくらいだろう。

まず左PRでレギュラー当確なのが、レベルズ、サンウルブズでもプレーした2015年ワールドカップ組のPR稲垣啓太だ。2番手を今年になってからバックローからPRに転向した中島イシレリ、さらに三上正貴、PR山本幸輝が追っている。ただジョセフHCは「忍耐強く中島を鍛えていった中で、ウルフパックで見せたパフォーマンスには手応えを感じている」と買っている。三上、山本はスクラムでアピールしたいところ。

スクラムの要、右PRはスクラムも強くフィールドプレーの評価も高い具智元、2015年ワールドカップ組のベテランPR山下裕史の2人はほぼ当確だろう。トンガ出身のヴァル アサエリ愛、ウルフパックでアピールした若手の木津悠輔が3枠目を争っているのが現状だ。

HOは実績と経験から堀江翔太、昨秋の遠征でケガの堀江の穴を埋めた坂手淳史の選出は間違いないだろう。ケガの影響で庭井祐輔は選ばれず3枠目をサントリーのHO北出卓也、堀越康介が争っている。ただ堀越はサントリーでは1番でプレーしており、右PRとHOの控えという考え方もできるかもしれない。

LOはジェイミージャパンになってからの実績を考えればアニセ サムエラ、ヴィンピー・ファンデルヴァルト、ヘル ウヴェの3人は選出されるだろう。ファンデルヴァルトとウヴェの2人はFLとしてもプレーできる。また201cmという身長を考えれば、日本代表資格さえ取得できればグラント・ハッティングも代表入りは確実視されている。ハッティングも神戸製鋼やサンウルブズではFLでもプレーしていることはプラスに働くはずだ。

4大会目のワールドカップ出場を狙う38歳、身長196cmのトンプソン ルークは、サンウルブズでは、得意の空中戦だけでなく運動量、タックル回数で高評価を得た。LOはもちろんFLとしてもプレーでき、経験も大きな武器だ。タックル力が魅力のLOジェームス・ムーアは、今後の合宿、試合で評価を上げたいところ。

競争の激しいバックローは何事もなければキャプテンFLリーチ マイケル、ウルフパックでゲームキャプテンを務めたジャッカルも上手いFLピーター・ラブスカフニ、世界的な突破力を誇るNo.8アマナキ・レレィ・マフィの3人がレギュラー格だ。

サンウルブズで高いパフォーマンスを発揮した2015年ワールドカップ組FLツイ ヘンドリック、CTBでもプレーしポテンシャルの高さを見せたNo.8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ、キャプテンシーに長けておりLOでもプレーできる姫野和樹もいる。FL徳永祥尭、布巻峻介は起き上がりのスピードやジャッカルなど自分たちの強みをアピールしたい。

PRとHOの合計8人、LOが4人、バックローが6人選出されるとちょうど18名となる。FW第1列を6人選出するとバックローは5人になるか。ジョセフHCは過去3年、欧州の競合と対戦するときは、控えにFWを6人起用してきた。LOやバックローは「その両方プレーできる選手」は選ばれる可能性が高く、それぞれしかできない選手はインパクトを与えることが必要だろう。

また今回、26人を選出したのはLOハッティング、ムーア、ラブスカフニ、ウォーレンボスアヤコの4人がまだ、日本代表資格を取得できていないことも考慮に入れたようだ。「今回スコッドに選ばれている資格未定の選手は、(その)見込みありとのことで、現段階でメンバーに選んだ。ワールドラグビーの回答はもうじき来ると思います。(宮崎でスタートする)『ファンデーション2』は重要な合宿になるので、しっかり参加してほしい気持ちで選んだ」(ジョセフHC)

いずれにせよ、接点、ラインアウトコーチも兼ねるジョセフHC自らが、26人を鍛え上げていく。

それでは次にBKを見ていこう。現在の16名から13名か14名が選出されることを考えれば、FWと比べて、かなり絞り込んだと言えよう。

SHは経験豊富なベテラン田中史朗、リーダーシップがある流大、サンウルブズで一貫性のあるパフォーマンスを発揮したSH茂野海人の3人が選出された。ワールドカップもこの3人で戦っていくはずだ。

またSOはジェイミージャパン不動の司令塔・田村優、CTBでもプレー可能だがSOとしても成長してきた松田力也の2人は当確だ。3人目としては中村亮土、ラファエレ ティモシー、山中亮平もSOとしてプレーできるため、もしものときは3人のうちの誰かがプレーすることもあるかもしれない。

インサイドCTBとしてはやっとケガから復帰したラファエレ、中村の2人がおり、ウルフパックでは松田も高いパフォーマンスを発揮した。アウトサイドCTBはウィリアム・トゥポウが一番手か。2番手を、ウルフパックでインサイドCTBからコンバートされた若手の梶村祐介が争っている。ただしトゥポウはWTB、FBでもプレーでき、ジェイミージャパンになってからラファエレや松島幸太朗も13番でプレーした。

WTB、FBはジョセフHC自ら「Xファクター(特別な能力)を持っている」と高く評価しているスピードスターWTB福岡堅樹、パワーが自慢のレメキロマノラヴァ、カウンター能力とユーリティティー性の高い松島の3人の選出は固い。

サンウルブズで評価を上げたFB山中亮平は身長188cmと大きく、左足のロングキックも武器でSH以外はどこでもプレーできる万能選手だ。ハイボールに強いWTBヘンリー ジェイミー、安定感のあるプレーがウリのFB野口竜司は、まずはPNCのメンバー争いに絡んでいきたい。

そして、今回のメンバー発表で少々サプライズになったのがWTBアタアタ・モエアキオラの招集だ。今春、大学を卒業したばかりだが、唯一の〝海外組〟でありチーフスで3トライを挙げていることも評価された。またモエアキオラもSO、CTB、さらにはバックローとしてプレーできることも大きかった。「アタアタは非常にパワフル。これまで自らコーチングをした経験はないが、サンウルブズではケガをしてしまった。その後はチーフスでまずまずのパフォーマンスをしている」(ジョセフHC)

サンウルブズで田村がCTBとしてプレーしており、SH3人とWTB福岡以外は複数のポジションでプレーすることができ、ワールドカップ本番でFWの控えを6人とすると、BKのベンチメンバーはSHともう1人の2人となる可能性が高い。ケガで出遅れたラファエレのみ、現在、サンウルブズの遠征に参加しているが、最終戦が終わったら合流する。BKはある程度メンバーを固定しながら連携を図っていく。

ワールドカップ本番では日本開催ということで、すぐにケガが出ても招集できることもあり、SHを2人にするかもしれない。ただし、SHは専門職のため3人をメンバーに入れると、残りは10人ほどとなる。いずれにしても、さまざまなポジションをこなす多様な選手か、福岡選手のスピードのような他の選手が取って代われない能力を持っていないことには最終スコッドには選ばれないだろう。

ジョセフHCは「サンウルブズではシーズンが続いている。(日本代表に選ばれなかったサンウルブズメンバーは)3年間見て知っているので、彼らがその試合でどう活躍するか、しっかり検証したい。またスーパーラグビー後はトップリーグカップ戦がある。その中でも、機会を与えられたときにアピールすることが大事。(今後)ケガ人は出てくると思うので、どの選手もいつ呼ばれてもラグビー的にフィットしていること、準備していること(が必要)」と、今回選ばれなかった選手への配慮も見せた。

ただ今回のメンバーが2019年ワールドカップの中心になることは間違いない。指揮官はすでにワールドカップの対戦相手を想定した練習や新しい戦術などを試すことも名言している。選手たちはまず、3度の宮崎合宿後に発表されるPNCのメンバー入りを目指し切磋琢磨していく。

 

◇日本代表 宮崎合宿メンバー

※数字はキャップ数

<FW/26名>

PR 稲垣啓太(パナソニック、25)

PR 中島イシレリ(神戸製鋼、2)

PR 三上正貴(東芝、35)

PR 山本幸輝(ヤマハ発動機、6)

PR 具 智元(Honda、7)

PR 山下裕史(神戸製鋼、51)

PR ヴァル アサエリ愛(パナソニック、5)

PR 木津悠輔(トヨタ自動車、0)

HO 堀江翔太(パナソニック、58)

HO 坂手淳史(パナソニック、13)

HO 堀越康介(サントリー、2)

HO 北出卓也(サントリー、0)

LO アニセ サムエラ(キヤノン、12)

LO トンプソン ルーク(近鉄、64)

LO グラント・ハッティング(神戸製鋼、0)

LO ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ、9)

LO ヘル ウヴェ(ヤマハ発動機、11)

LO ジェームス・ムーア(宗像サニックス、0)

FL ツイ ヘンドリック(サントリー、43)

FL 徳永祥尭(東芝、10)

FL 布巻峻介(パナソニック、7)

FL リーチ マイケル(東芝、59)◎キャプテン

FL ピーター・ラブスカフニ(クボタ、0)

FL/ No.8 姫野和樹(トヨタ自動車、9)

No.8 ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ(宗像サニックス、0)

No.8 アマナキ・レレィ・マフィ(NTTコミュニケーションズ、22)

<BK/16名>

SH 茂野海人(トヨタ自動車、7)

SH 田中史朗(キヤノン、69)

SH 流 大(サントリー、15)

SO 田村優(キヤノン、54)

SO/CTB 松田力也(パナソニック、16)

CTB 中村亮土(サントリー、16)

CTB ラファエレ ティモシー(神戸製鋼、14)

CTB ウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ、6)

CTB 梶村祐介(サントリー、1)

WTB 福岡堅樹(パナソニック、30)

WTB レメキ ロマノ ラヴァ(Honda、8)

WTB アタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼、3)

FB/WTB 松島幸太朗(サントリー、30)

FB/WTB ヘンリー ジェイミー(トヨタ自動車、1)

FB 野口竜司(パナソニック、13)

FB 山中亮平(神戸製鋼、12)

 

◇ラグビー日本代表 今後のスケジュール

6月9日~19日 宮崎合宿①

6月23日~7月3日 宮崎合宿②

7月7日~17日 宮崎合宿③

7月21日~25日 盛岡合宿

7月25日~28日 釜石へ移動

7月27日 PNCフィジー代表戦 @釜石鵜住居復興スタジアム

7月28日~8月1日 堺合宿

8月1日~4日 大阪へ移動

8月3日 PNCトンガ戦代表戦 @東大阪市花園ラグビー場

8月4日~12日 フィジー遠征

8月10日 PNCアメリカ代表戦 @スヴァのANZスタジアム

8月18日~28日 網走合宿

8月末 ワールドカップ最終スコッド(31名)発表

9月6日 南アフリカ代表戦@熊谷ラグビー場

9月20日 ワールドカップ開幕(対ロシア代表戦)

この記事を書いたひと

斉藤 健仁KENJI SAITO

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。