RWC2019

ウルフパック6試合を総括する。木津、尾崎といった若手がアピール!

斉藤健仁の「ジャパンの現在地」第6回
2019.5.24 11:25

 ラグビー日本代表候補選手たちは2月から東京・町田、千葉・浦安、沖縄・読谷で合宿を張って強化を進め、そして3月末から5月17日まで、ほぼ日本代表候補選手で固められた特別編成チーム「ウルフパック」として6試合を敢行した。

 初戦こそハリケーンズBに敗れたが、結局、その後の試合では5連勝し5勝1敗で全日程を終えた。今回はウルフパックの6試合を総括していきたい。

 まず、ウルフパックを自ら指揮したジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)のコメントと全試合の結果を紹介する。「6試合中5試合に勝つことができ、点数をつけるとしたら10点満点中7点。ここにきて、各ポジションに層の厚さをもたらすことができ、ポジション争いも激化しているのは良いこと」(ジョセフHC)

 

〈ウルフパック試合結果〉

3月29日 ●31-52 ハリケーンズB(ニュージーランド・ポリルア)

4月05日 ○46-21 ハイランダーズB(ニュージーランド・ダニーデン)

4月20日 ○66-21 ハリケーンズB(市原・ゼットエーオリプリスタジアム)

4月27日 ○51-38 ウェスタン・フォース(東京・秩父宮ラグビー場)

5月12日 ○66-17 ブランビーズB (オーストラリア・キャンベラ)

5月17日 ○39-12 レベルズB(オーストラリア・メルボルン)

 

 ウルフパックの試合が始まる前に「一人ひとりを見極めたい」と指揮官は言っており、個人的には、試合ごとに意図的に選手を大きく変更して臨むと思っていた。

 しかし、実際、蓋を開けて見れば、「機会を得たら選手たちは自分たちがやらないといけないことを、一貫性を持ってやらなければならない」「メンバーを変えると選手にあまりいい印象を与えない。良いパフォーマンスに対してご褒美を与えている」というジョセフHCの言葉の通り、前の試合で活躍した選手をそのまま起用するケースが多かった。

「(ケガなどで)何名かが不在の中でも新しい選手たちを育成することができた」と胸を張ったニュージーランド出身の指揮官が、まず名指しで褒めたのがPR木津悠輔(トヨタ自動車)だった。「(最終戦の)レベルズB戦では、若い木津(悠輔)がタイトヘッドプロップとして非常に良いパフォーマンスをしてくれたことが収穫だ」(ジョセフHC)

 2年目の23歳の木津は、2月のトップリーグ選抜対クレルモンの試合で、スクラム、ボールキャリアでアピールして追加招集された。サンウルブズで試合に出続けているPR山下裕史、主力の一人PR具智元、浅原拓真、ヴァルアサエリ愛とライバルの右PRがいる中で、先発1試合、途中出場4試合と大きなアピールに成功した。

 BKでは同じく2年目の尾崎晟也(サントリー)が安定したパフォーマンスを見せた。練習からいい動きを見せていたこともあり、エースWTBの福岡堅樹(パナソニック)、レメキ ロマノ ラヴァ(Honda)の2人、ベテランの山田章仁(NTTコミュニケーションズ)がいたにも関わらず、先発出場こそなかったが左右のWTBの両方で5試合に出場。尾崎はフィジカルも強く、FBでもプレーできるだけに、競争の激しいバックスリー争いに名乗りを上げた。

 もう一人BKだと、2月の合宿では12番のインサイドCTBでプレーしていた23歳の梶村祐介(サントリー)も、ケガ人の影響でウルフパックからは13番をつけて5試合に先発し、アウトサイドCTBでもプレーできることを証明してみせたと言えよう。

 WTBと同じように競争の激しいバックロー(FL、No.8の総称)では、FL布巻峻介(パナソニック)が調子の良さを見せた。3試合に先発し、トライを挙げた試合もあり、最終戦でも相手のボールを奪うジャッカルを決めた。「チームとして、一試合行うごとにまとまっていくことができたし、6月から始まる宮崎合宿に向けて最終課題の抽出ができ、また勢いをつけることができた」(布巻)

 またウルフパックでSH、SOのハーフ団をどのように起用するかも注目していた。まずSHは指揮官の信頼厚いベテランの田中史朗(パナソニック)、リーダーシップに長けた流大(サントリー)、サンウルブズでプレーし続けている茂野海人(トヨタ自動車)、身体能力の高い内田啓介(パナソニック)、昨年度の神戸製鋼の優勝に貢献した日和佐篤と5人の候補がいた。

 もっと日和佐も積極的に起用するかと思われたが、流が6試合すべてに先発し、日和佐は途中出場で3試合、内田も途中出場で1試合という結果になった。日和佐は途中から試合に出た1、2試合目にもっとアピールすることが必要だったのかもしれない。

 またSOは田村優(キヤノン)がケガ上がりということもあり、1~3試合目、6試合目の4試合で先発として起用された。4試合、5試合目は松田力也(パナソニック)が10番を背負った。松田は他の4試合ではCTBとして出場し、SO、インサイドCTBの両ポジションで安定感のあるプレーを見せた。そのため、山沢拓也(パナソニック)は2人に割って入ることができず、1試合11分の出場機会しか回ってこなかった。

 また2人の司令塔は田村がプレースキックを26本中22本決めて(成功率84.6%)、松田はそれを上回る23本中21本成功させた(91.3%)。80%以上であれば一流の証である。2人のゴールキック成功率が上がってきたことは頼もしい限りだ。

 昨年からジョセフHCは選手選考の際に「複数ポジションができること」に加えて「一貫性」という言葉を繰り返し使い、重要視してきた。6月3日に9日からの宮崎合宿メンバー40名前後が発表されるが、ウルフパック、そしてサンウルブズで一貫性を持ったパフォーマンスを続けた選手は選出されるだろう。

 9月20日のワールドカップの開幕まで残り120日を切った。最終スコッドは31名である。このまま一貫性を持ちつつも、パシフィック・ネーションズカップを経て徐々にパフォーマンスを上げていった選手が桜のジャージーを背負い、開幕戦のピッチに立つはずだ。

 

〈ラグビー日本代表 ワールドカップに向けた活動スケジュール発表〉

6月3日 宮崎合宿メンバー発表

6月9日~19日 宮崎合宿①

6月23日~7月3日 宮崎合宿②

7月7日~17日 宮崎合宿③

7月21日~25日 盛岡合宿

7月25日~28日 釜石へ移動(27日 対フィジー代表戦)

7月28日~8月1日 堺合宿

8月1日~4日 大阪市へ移動(3日 対トンガ戦代表戦)

8月4日~12日 フィジー遠征(10日 対アメリカ代表戦)

8月18日~28日 網走合宿

9月2日 ワールドカップ最終スコッド(31名) 締め切り

9月6日 南アフリカ代表戦

9月20日 ワールドカップ開幕 対ロシア代表戦

この記事を書いたひと

斉藤 健仁KENJI SAITO

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。