RWC2019

W杯に向けて日本代表候補の絞り込みが本格化!サバイバルの鍵となる「ヴァーサティリティ」とは

斉藤健仁の「ジャパンの現在地」第5回
2019.5.10 6:20

 ラグビーワールドカップ開幕まであと130日あまり。ラグビー日本代表候補選手たちはサンウルブズ、そして「ウルフパック」の2チームに分かれてオーストラリア遠征を敢行。サンウルブズは5月12日(日)にブランビーズと対戦、ウルフパックは同日にブランビーズBと、また17日(金)にレベルズBと対戦する。

 現在、ワールドカップの日本代表候補は約60名だが、6月9日からの宮崎合宿には35~40名くらいに絞られるため、各ポジションの競争がいよいよ激しくなってきている。

 そして6月からは本番で戦う相手を想定した練習を始めながら、7月から8月にかけてフィジー代表、トンガ代表、アメリカ代表と対戦するPNC(パシフィック・ネーションズ・カップ)に備えるというわけだ。

 ワールドカップの最終メンバーは9月2日までに発表されることが決まっている。最終スコッドに残る選手は31名であり、FW18名、BK13名ほど予想される。ただ2016年9月にジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が就任して以来、テストマッチ(国同士との真剣勝負)での試合出場時間数で〝トップ20〟に入ってくるような選手は、大きなケガやよほど調子が悪くなければ、ワールドカップの最終スコッドに残ってくるはずだ。

 選手をポジション別に試合出場時間の多い選手を列挙してみると下記のようになり、彼らを軸にワールドカップを戦っていくことは明白であろう。

 

PR:稲垣啓太、具智元

HO:堀江翔太

LO:アニセ サムエラ、ヘル ウヴェ、ヴィンピー・ファンデルヴァルト

FL:姫野和樹、リーチ マイケル

No.8:アマナキ・レレィ・マフィ

SH:田中史朗、流大

SO:田村優

CTB:ラファエレ ティモシー、ウィリアム・トゥポウ

WTB:福岡堅樹、山田章仁、レメキ ロマノ ラヴァ

FB:松島幸太朗

 

 最終スコッドの残りの10数人の中には、ベテランPR山下裕史、若手HO坂手淳史、万能BK松田力也、SOもプレーできるCTB中村亮土、2015年ワールドカップも経験しLOでのプレー経験もあるFL/No.8ツイ ヘンドリック、サンウルブズで高いパフォーマンスを発揮し続けていてSOもCTB、WTBでもプレー可能なFB山中亮平、7月には日本代表資格を取得見込みのLO/FLグラント・ハッティング、FLピーター・ラブスカフニ、No.8/CTBラーボニ・ウォーレンボスアヤコなども入ってくる可能性は大いにある。

 日本代表のジョセフHCはもともと、FB松島をCTBで起用したり、本来はバックローの姫野やファンデルヴァルトをLOとして使っていたりした。そして2017年秋から、明らかに複数ポジションでプレーできる選手を重用し始めた。CTB中村のスコッド選手の理由を指揮官は「CTBだけでなくSOでもプレーできる」と説明し、WTBレメキも「WTBだけでなく、CTBやFBもできるようになってほしいと(ジョセフHCに)言われた」と語っていた。

 突然、試合中にケガ人が出た場合の対応はもちろんのこと、イエローカードでシンビンとなる場合や、HIA(Head Injury Assessment、脳しんとうの疑いがある選手をドクターが確認するため一時交替を認めること。脳しんとうでなかった場合でも10分間は試合に戻れない)などワールドカップ本番を想定してのことだ。

 昨年3月のサンウルブズの試合では、ジョセフHC(昨年はサンウルブズの指揮官も兼任していた)は、本来はFLだが、セブンズ(7人制ラグビー)でリオデジャネイロ五輪に出場したFL徳永祥尭をWTBで起用し、ファンを驚かせた。そして今年も4月19日のハリケーンズ戦で、本来はバックローのウォーレンボスアヤコをCTBとして起用した。

 日本代表のコーチとサンウルブズのHCを兼任するトニー・ブラウンは「もともと(CTBでの起用は)頭にあった。スキルもあるしBKができる能力がある。フィジカルの強い相手のCTB陣に対して上手く機能すればいい」と相手の選手を見ての判断だったことを認めつつ、「FW第3列の選手で、BKでプレーできる選手がいる。昨年は徳永がWTBでプレーした。複数ポジションできる選手がいることはワールドカップに向けてスコッドの層を厚くできる」とその理由を説明した。

 複数ポジションができる選手をスコッドに持つことをブラウンHCは英語で「Having that versatility(adds a lot to World Cup squads)」と言った。

「Versatility(ヴァーサティリティ)」とは「多才、多様性、多目的性」を意味する言葉である。ワールドカップの最終スコッド31名、もしくは宮崎合宿の40名ほどに残るためには、PRやHO、SHといった専門的なポジションの選手以外は、「Versatility」という言葉が鍵を握ってくることになりそうだ。逆に言えばひとつポジションしかできない選手は、それを凌駕するようなパフォーマンスやリーダーシップを見せることが必要とも言える。

 練習を見る限りでは仲よさそうに見える日本代表候補選手たちだが、ある選手は「ピリピリしてきた」と吐露していた。いずれにせよ、激しい競争が強いチームを作ること間違いない。

この記事を書いたひと

斉藤 健仁KENJI SAITO

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365 」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。